労働条件を変更するもっとも一般的な方法は、就業規則を変更する方法です。
就業規則を変更する場合、労働者代表(労働者の過半数で組織する労働組合、これが存在しない場合は労働者の過半数の代表者)の意見を聴いた上で、労働基準監督署に届け出るとともに、労働者に周知しなければなりません。
ただし、就業規則を変更することで、労働条件を変更するには、2つの条件があります。
1つは、 法令や労働協約(労働組合と使用者側との合意)に反してはならないという条件です(労働契約法13条)。
もう1つの条件は、 労働者に不利益な変更をする場合には、変更が合理的なものと認められる必要があるという条件です(労働契約法10条)。
この不利益変更に関する規定は、「秋北バス事件」最高裁判決を先般の労働法改正で明文化したものになります。
そして、合理性の有無は、具体的には、次の事情等を総合考慮して判断するとされています。
例えば、労働時間の変更であれば、労働者にとって影響が大きいので、「労働者の受ける不利益の程度」が大きいと判断され、その合理性の判断は、慎重にされます。逆に、会社の取引先への納品の関係上、どうしても1時間労働時間を遅い時間帯にずらさざるを得ない場合には、「労働条件の変更の必要性」が高いことになります。
このように、就業規則の変更の合理性は、個別の事情を考慮して判断されることになりますから、ご判断に迷われた場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
他の方法としては、 雇用契約(労働契約)を変更することによる方法があります。つまり、労働者との間で個別に合意することで労働条件を変更するということです。
このとき気をつけていだだきたいのは、就業規則や労働協約よりも不利な内容に変更することはできないことです(労働契約法12条、労働組合法16条)。このルールを就業規則については、有利原則、労働協約については、労働協約の規範的効力といいます。
ただし、労働者の自由な意思に基づく真の合意がある場合には、不利益的変更も認められるという考え方が有力です。しかし、何をもって「労働者の自由な意思に基づく真の合意」とするのかの判断が困難であり、この方法による不利益的変更は、お勧めできません。
以上のように、有利原則が存在するので、実務上、労働条件を変更する方法として、雇用契約(労働契約)の変更することはあまりされておりません。
労働協約とは、労働組合と使用者が締結することができる書面協定です。
労働組合が使用者との間で労働協約を締結すると、その効力は、労働組合の構成員に効力が及びますので、 労働協約を締結することにより、労働条件を変更することが可能です。
また、1つの事業所に常時使用される労働者の4分の3以上の数の労働者が1つの労働協約の効力を受けることになった場合には、その事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、労働協約の効力が生じます(労働協約の一般的拘束力)。
ただし、「1つの事業所」といえるかや、「同種の労働者」といえるかについては、法律的判断が必要ですから、ご判断に迷われた場合には、弁護士に相談することをお勧めします。
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