2019年4月に施行された「改正出入国管理法」によって、単純労働分野への外国人労働者の受け入れが拡大されました。法改正から半年以上経過しましたが、我が国における外国人労働力政策において、現在大きな転換期にあるといえるでしょう。
毎年1月に厚生労働省から発表されている「外国人雇用状況」によると、2018年10月末現在の、我が国における外国人労働者数は約146万人であり、前年比14.2%の増加であるとのことです。この数値は2019年4月の入管法改正前の状況ですから、2020年1月に公表される数値は、昨年の増加率をさらに上回ることが予想されます。
外国人労働者の受入れ拡大に伴い、2020年4月1日からは健康保険法における被扶養者認定において、国内居住要件が求められることになります。
現在の健康保険では、海外に住んでいる親族であっても、要件さえ満たせば被扶養者認定を受けることができます。「健康保険被扶養者(異動)届」による申請時に、適用となる親族の範囲にあること、生計維持要件を満たしていることが確認されれば、海外在住で被保険者と同居していなくとも保険適用の対象となります。
母国に残された外国人労働者の家族の疾病、負傷などについても、これらの要件を満たせば、海外居住であっても日本の健康保険で給付を行なっており、医療保険財政への影響の面等において、度々問題視されてきました。
2020年4月1日以降は、「日本国内に住所を有すること」が被扶養者として認定される要件となりました。ただし、外国居住者であっても被扶養者として認められる者や、日本国内にいても被扶養者から除外される者など、一定の例外があります。
以下にその例外(限定列挙)について整理します。
《改正後の健康保険法第3条7項》
この法律において「被扶養者」とは、次に掲げる者で、日本国内に住所を有するもの又は外国において留学をする学生その他の日本国内に住所を有しないが渡航目的その他の事情を考慮して日本国内に生活の基礎があると認められるものとして厚生労働省令で定めるもの(※1)をいう。ただし、後期高齢者医療の被保険者等である者その他この法律の適用を除外すべき特別の理由がある者として厚生労働省令で定める者(※2)は、この限りでない。
① 外国において留学をする学生
② 日本からの海外赴任に同行する家族
③ 海外赴任中の身分関係の変更により新たな同行家族とみなすことができる者(海外赴任中に生まれた被保険者の子ども、海外赴任中に結婚した被保険者の配偶者など)
④ 観光・保養やボランティアなど就労以外の目的で一時的に日本から海外に渡航している者(ワーキングホリデー、青年海外協力隊など)
⑤ その他日本に生活の基礎があると認められる特別な事情があるとして保険者が判断する者
つまり、①~⑤に該当する者は、海外居住でも、例外的に被扶養者として認定されるということになります。これまで外国人労働者の配偶者、子などの一定の範囲で被扶養者と認定されていた海外居住者は除外されることになります。
①「医療滞在ビザ」で来日した者。医療滞在ビザとは、日本において治療等を受けることを目的として訪日する外国人患者等(人間ドックの受診者等を含む)及び同伴者に対し発給されるものです。
②「観光・保養を目的とするロングステイビザ」で来日した者(富裕層を対象とした最長1年のビザ)
つまり、上記①②の者は、たとえ日本国内に居住していても、被扶養者としては認めないということになります。
国民年金保険の第3号被保険者認定についても、健康保険と同じ2020年4月1日から国内居住要件が求められますが、その要件は上記※1、※2と同様に判定されます。第1号被保険者については、従来から国内居住要件がある一方で、国内にいても被保険者から除外される例外規定が新設されましたが、それは上記※2と同様に判定されます。
現在、海外居住被扶養者を認定されている被保険者については、2020年4月1日より、被扶養者認定削除の届出が必要となります。ただし、現在入院中の海外被扶養者に関しては例外措置が取られる等の経過措置が設けられるとのことです。
わが国の急速な少子高齢化に伴い、労働力人口が激減し、外国人労働者比率がますます高まっていくことが予想されます。健康保険、年金保険をはじめとする社会保障制度の枠組みの中で、どのように外国人労働者やその家族に保険給付を行っていくか、大きな判断を迫られています。
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