弁護士 杉浦 恵一
※こちらの記事は2022年08月05日までの情報を元に作成しています。執筆時点以降の事情変更により記事の内容が正確でなくなる可能性がございます。
引用しているウェブサイトについても同様にご注意ください。
通称パワハラ防止法(正式名は改正された労働施策総合推進法)が、2022年4月1日から、中小企業にも適用されることになりました。
この改正法により、パワーハラスメントの防止措置をとる義務が、中小企業にも適用されることになります。
パワハラが許されないことはもちろんですが、それを防止するための措置を事前にとっておくことも義務されることになりました。
これには、罰金等の罰則は特に設けられていませんが、将来的には何らかの罰則が設けられる可能性もありますので、注意が必要でしょう。
まず、厚生労働省によれば、パワーハラスメントは、以下の3つの要素を全て満たす言動だと定義されております。
例えば、上司と部下の関係などがあげられます。
同僚で職場での力関係に特に差がないような場合には、当てはまらないと考えられますが、同僚でも何らかの職場での差があれば、該当すると考えられます。
例えば、部下が業務上のミスをした際に、それを叱責することは、業務上の行為ですので、必要性はあると考えられます。
ただし、不必要な大声で叱責したり、多くの従業員の前で叱責することや、身体的な攻撃を使って叱責することは、「相当な範囲」に収まらない可能性が高いのではないかと予想されます。
「必要性」と「相当性」の2つの観点からの検討が必要です。
上記の要素を満たすという定義ですが、厚生労働省では、以下のような例を挙げて、パワハラに該当する行為を説明しています。
このような例が挙げられていますが、例えばミスがあった際に叱責することなどは、程度の問題やその仕方によって微妙な場合が出てくることが予想されますので、注意が必要でしょう。
パワハラ防止法では、このような職場でのパワーハラスメントを防止するために講ずべき措置として、以下のような措置を挙げています。
これは、厚生労働省の説明では、職場におけるパワハラの内容やパワハラを行ってはならない旨を明確化し、労働者に周知等することや、パワハラを行った者に対して厳正に対処する旨の方針・対処等を就業規則などの文書で明確化し、労働者に周知等をすることが挙げられています。
これは、厚生労働省の説明では、パワハラの相談窓口をあらかじめ定めて労働者に周知等をすることと、相談窓口の担当者が、相談内容や状況に応じて適切に対応できるようにしておくことが挙げられています。
中小企業の場合に、従業員数が少ないと、この相談窓口の担当者を内部に設けることが難しいかもしれませんので、外部の活用も1つの方法だと考えられます。
これは、厚生労働省の説明では、事実関係を迅速かつ適切に行うこと、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと、事実関係の確認後に行為者に対する措置を適正に行うこと、再発防止に向けた措置を講ずること(事実が確認できなかった場合も含む)が挙げられています。
「配慮のための措置」、「行為者に対する措置」というのは抽象的で分かりにくいところがありますが、注意等により行為を指摘し、配置転換等で同じようなことが発生しないようにする等、職場の状況などによって色々な方法が考えられるでしょう。
これは、厚生労働省の説明では、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じ、その旨を労働者に周知することと、相談したこと等を理由として解雇その他不利益取り扱いをされない旨を定め、労働者に周知等すること、が挙げられています。
相談したことをもって解雇等をしますと、不当解雇の問題が出てきますので、注意が必要でしょう。
中小企業でも、このような措置を講ずる義務が適用されることになりましたので、従業員から聞かれた際に答えることができるよう、事前に準備をしておいた方がいいでしょう。
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