弁護士 杉浦 恵一
本年7月4日の日本経済新聞に、アメリカでは、いくつかの州で、州が定める新型コロナウィルス対策のガイドラインを順守していれば、就業時間中に従業員が職場で新型コロナウィルスに感染したり、来場した顧客が新型コロナウィルスに感染しても、企業はその責任を負う必要がないという「コロナ免責」の法律を議論している、という報道がありました。
一部の州では、既にそのような法律が成立していたり、州知事令が出されたりしているということです。
このような、就業中や職場、店舗での新型コロナウィルス感染に対して、一定のガイドラインを順守していることを条件につけたとしても、事業者の責任を免責するということであれば、事業者としては、紛争リスクが減り、金銭的・時間的なコストを軽減することができそうです。
日本では、最近、新型コロナウィルスへの感染が労働災害として認められ、労災給付が受けられたという報道が出ています。現時点では、厚生労働省によって発表された取扱いにおいて、医療従事者であれば、業務外で感染したことが明らかである場合を除いて、労働災害に認定されるようです。
医療従事者以外でも、感染経路が特定されていて、感染源が業務に内在していたことが明らかに認められる場合には、労働災害に認定されるようです。例えば、飲食店などの接客業で、新型コロナウィルスに感染した人が来店し、接客中に感染したという場合には、労働災害として認定されそうです。
新型コロナウィルスの場合、感染力が強く、市中感染が広がると、どこで感染したか分からなくなりそうです。このような特徴がありますが、医療従事者以外で、感染経路が不明な場合、又は特定されない場合であっても、新型コロナウィルスへの感染の場合には、労働災害と認められることがあるようです。
その場合とは、複数の感染者が確認された労働環境下の業務、顧客等との近接や接触の機会が多い労働環境下での業務、といったことが想定されているようです。労働災害として認められれば、医療費が労災保険から支給されますし、一定の範囲で給料が支払われることになります。
しかし、労災保険で全ての補償が受けられるわけではありません。上に出てきたアメリカの「コロナ免責」の事例と同じく、日本でも、事業者は、職場で新型コロナウィルスに感染した労働者から訴えられる可能性があります。
労働災害に関しては、以前から職場の「安全配慮義務違反」があった場合に、慰謝料など労災保険では賄われないものが請求されることがありました。
「安全配慮義務」とは、労働者が、安全、健康に労働することができるように配慮する事業社の義務のことであり、以前は裁判例上で認められていましたが、労働契約法第5条にも記載されることになりました。
安全配慮義務に違反するかどうかは、雇用主が、発生する事故等を事前に予見できたかどうか、予見できたとして回避できたかどうか、が問題になります。
このような安全配慮義務に違反した場合には、起こった労働災害によって労働者に損害が発生すると、雇用主に対して、慰謝料などの請求がされる可能性が否定できません。
新型コロナウィルスの場合、職場でマスク禁止にしたり、手袋禁止にするなど、従業員が予防対策を取ることを妨げるようなことがあれば、安全配慮義務違反に反するのではないかと思われます。
これを超えて、どこまで積極的に感染対策をしなければならないかは、新しい問題なので何とも言いにくいところがありますが、三密(密閉、密集、密接)を避けるということが強調されてていますので、職場の換気をしないようなときは、場合によっては安全配慮義務違反に問われる可能性もあります。
今後、新型コロナウィルスの性質が判明したり、さらなる具体的な対策、ガイドラインが出てきた場合には、それに従わないことをもって安全配慮義務違反に問われる可能性がありますので、注意が必要でしょう。
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