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配転無効確認の訴え

解雇


配転(配置転換、転勤)は、職種や勤務地の変更を伴うことから労働者の家庭生活に大きな影響を及ぼす可能性があります。そのため、使用者がかかる異動を行うには、労働者の同意または命令権といった根拠が必要となります。また、当然、権利の濫用となるような異動は許されません。

一般的に、次のような場合には、配転命令が無効であると解されています(東亜ペイント事件 最高裁判決昭和61年7月14日)。

  1. ① 業務上の必要性がない場合(例・神戸地裁平成16年8月31日判決)
  2. ② 不当な動機・目的をもってなされた場合(例・東京高裁平成23年8月31日判決)
  3. ③ 従業員に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものである場合(例・大阪地裁平成9年10月14日決定)
  4. ④ 職種・勤務場所限定の合意がある場合(例・東京地裁平成10年9月21日決定)

請求の趣旨

裁判所手続きにおいて、配転命令の効力を争う確認訴訟を提起する場合、その請求の趣旨を「原告が、被告◯◯◯(新部署)に勤務する雇用契約上の義務がないことを確認する」とするのが一般的です。

(旧部署)での雇用契約上の権利又は義務の存在確認請求や、配転命令の無効確認請求を請求の趣旨とすることは、確認の利益がないため原則として許されません。

請求の原因

配転命令の効力を争う確認訴訟において、請求原因は、「雇用契約の締結」、「使用者による配転先での就労義務(争いの存在)=使用者による具体的な配転命令の内容」の主張で足りますが、訴えを提起する労働者側は、これに加えて、配転命令が無効であることを基礎付ける事実も訴状にて主張するのが一般的です。

和解

通常訴訟においては、判決に至るまで訴訟の進行状況に応じて裁判所から和解を勧められることが多く、配転命令の効力を争う確認訴訟における和解内容は、

  1. ① 配転命令に応じる方向性のもの
  2. ② 配転命令を撤回する方向のもの
に大きく分かれます。

配転命令に応じる方向性の和解条項

  1. 原告は、被告の原告に対する◯年◯月◯日付けの(新部署)への配置転換(以下「本件配転」という。)の効力を争わない。
  2. 原告は、本件配転に従い、◯年◯月◯日以降、(新部署)に赴任する。
  3. 被告は、前項の日から概ね2年経過後を目処に、原告の勤務希望も踏まえて原告の勤務場所を検討するものとする(*)
  4. 原告と被告は、今後、相互に、本件紛争の存在及び本和解の内容をみだりに第三者に口外しないものとする。
  5. 原告は、その余の請求を放棄する
  6. 原告と被告は、原告と被告との間には、本件に関し、本和解条項に定めるほか、一切の債権債務がないことを相互に確認する。
  7. 訴訟費用は、各自の負担とする。

(*)労働者に対し配慮した条項ですが、あくまでも紳士協定にすぎません。

配転命令を撤回する方向性のもの

  1. 被告は、原告に対し、原告が勤務場所を(旧部署)とする雇用契約上の地位を有することを確認する。
  2. 被告は、原告に対し、昇進その他の処遇及び配置転換等について、原告の本件配置転換命令の拒否を理由とする一切の不利益な取扱いをしないことを確約する。
  3. 原告と被告は、今後、相互に、本件紛争の存在及び本和解の内容をみだりに第三者に口外しないものとする。
  4. 原告はその余の請求を放棄する。
  5. 原告と被告は、原告と被告との間には、本件に関し、本和解条項に定めるほか、何らの債権債務がないことを確認する。
  6. 訴訟費用は各自の負担とする。

慰謝料請求

配転命令が不当な動機に基づく場合など、違法性を帯びる場合、労働者は雇用主に対して、配転無効確認とともに、不法行為に基づく損害賠償請求を請求することが考えられます。

配転命令が業務上の必要性がないにも関わらず行われたものであり、権利の濫用として違法であるとして慰謝料請求を認めた事例(札幌地裁平成18年6月7日判決)もありますが、配転命令が権利の濫用に当たると認定されても、不法行為に基づく損害賠償請求が認められるほどの違法性を帯びるか否かは別問題です。そのため、慰謝料については認めてもらえないか、認められても少額にとどまることが多いのが現状です。

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