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弁護士 杉浦 恵一

懲戒手続・処分の妥当性

※こちらの記事は2022年08月22日までの情報を元に作成しています。執筆時点以降の事情変更により記事の内容が正確でなくなる可能性がございます。

引用しているウェブサイトについても同様にご注意ください。

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使用者・被用者(社員など労働者)の関係で、被用者に不祥事や問題な行動があった場合、使用者は懲戒処分をする場合があります。

しかし、一般的な会社では、そこまでの頻度で懲戒処分をすることはなく、これまで一度も懲戒処分をしたことがない会社もあると思います。

懲戒処分は、何でもできるというわけではなく、一定の制限がありますので、懲戒処分を検討する場合には、このような制限にかからないように注意する必要があります。

ちなみに、労働契約法15条では、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と定めています。

就業規則に懲戒処分の定めがあるか

懲戒処分をする場合には、就業規則に懲戒処分の定めがなければなりません

就業規則に懲戒処分の定めがないにもかかわらず、懲戒処分をしてしまいますと、具体的な根拠がなく処分してしまうことになります。

懲戒処分をする前に、まずは就業規則に懲戒処分の定めがあるかどうかを確認した方がいいでしょう。

社員の行為が懲戒処分の対象となっているか

就業規則に懲戒処分の定めがあったとしても、問題になっている社員の行為が、懲戒処分の対象となっているかどうかを確認する必要があります。

そして、確認するためには、社員のどの行為が問題なのかも、具体的に日時、場所、行動を特定する必要があるでしょう。

手続きがきちんと行われているか

懲戒処分を下す場合には、きちんと懲戒処分を判断するための手続きが行われているか確認する必要があります。

懲戒処分は、その対象となった社員に対して相当の不利益を与える行為ですので、まずは、その対象となった社員に、問題となった行動に対する弁明があるか否かを聞くなど、弁明の機会を保障する必要があります。

また、懲戒の対象となっている事実や、懲戒手続が行われていることをきちんと告知したり、懲戒処分を決定するための手続(例えば懲戒処分を判断するのは社長の独断ではなく、委員会を組織する定め)が定められていれば、そのような手続きが守られているかも確認する必要があります。

このような手続きが社員に保証されていない場合には、結果的に懲戒処分自体は妥当だとしても、手続きの保障がなされなかったことで、懲戒処分が争われてしまう可能性が否定できません。

懲戒処分の内容が妥当な内容であること

社員に問題の行動があれば、どのような懲戒処分を下しても構わないというわけではありません。

労働契約法15条にもありますが、社員の問題となった行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合には、その懲戒処分が無効になる可能性があります。

例えば、一度寝坊して遅刻した場合に、いきなり懲戒解雇というのは、問題となった行動の内容と結果の重大さが釣り合っていないということで、処分が無効になる可能性が高いのではないかと予想されます。

また、減給の懲戒処分の場合ですが、労働基準法91条では、「就業規則で、労働者に対して減給の制裁を定める場合においては、その減給は、一回の額が平均賃金の一日分の半額を超え、総額が一賃金支払期における賃金の総額の十分の一を超えてはならない。」というように、減給できる金額の上限が定められていますので、これに反するような懲戒処分はできない(仮にしても効力がない)と考えられます。

このように、懲戒処分の内容が妥当な内容であるかどうかも、慎重に考える必要があります。

令和4年8月1日の日本経済新聞の記事でも、公務員の懲戒に比べて、一般企業の懲戒に対しては、裁判所は抑制的(懲戒を認めにくい方向)という解説がなされています。

このように、懲戒処分はどのようなことでもできるわけではありませんので、懲戒処分をする必要が生じた場合であっても、慎重に準備する必要があるでしょう。

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