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メンタルヘルス不調者に対する懲戒処分

昨今、労働者の精神疾患による休職が増加し続けています。平成22年度から24年度において、精神障害の労災認定件数が3年連続で過去最多となるなど、我が国における大きな社会問題のひとつとなっています。

平成23年に国家公務員がとった1ヶ月以上の長期病欠の原因の第1位が、うつ病などの精神疾患(64.6%)であるという人事院の実態調査からも、その深刻さがうかがえます。

裁判例においても、労働者の精神疾患について事業者に多額の損害賠償責任を認めたものや、事業者役員個人の損害賠償責任を認めたものが増え、事業主の皆様にとっての大きな経営上のリスクとなっています。

職場において、いかにそのような労働者の発生を防ぐか、あるいは減らしていくか、というテーマは、将来的に事業の収益等を高めるための投資であるという考え方をする必要があるでしょう。

メンタルヘルス不調が疑われる労働者が無断欠勤を続けたことに対する懲戒処分(諭旨退職)の可否について、注目すべき最高裁判決(日本ヒューレット・パッカード事件:最判平成24年4月27日労判1055号5頁)が下されています。

日本ヒューレット・パッカード事件:最判平成24年4月27日労判1055号5頁

「精神的な不調のために欠勤を続けていると認められる労働者に対しては、精神的な不調が解消されない限り引き続き出勤しないことが予想されるところであるから、使用者である上告人としては・・・(中略)・・・

精神科医による健康診断を実施するなどした上で・・・(中略)・・・その診断結果等に応じて、必要な場合は治療を勧めた上で休職等の処分を検討し、その後の経過を見るなどの対応を採るべきであり、このような対応を採ることなく、・・・(中略)

諭旨退職の懲戒処分の措置を執ることは、精神的な不調を抱える労働者に対する使用者の対応としては適切なものとはいい難い。」

事業者は、メンタルヘルス不調が疑われる労働者に対しては、産業医等との面談を勧める等の措置を講じるべきであり、これを怠ることは、安全配慮義務違反と評される場合があることを念頭におくべきでしょう。

労働契約法第5条

「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする」
うつ病は人口の1~3%にみられ、決して稀な疾病ではありません。1000人の事業所であれば10~30人がうつ病に罹患していてもおかしなことではないのです。

実際職場で、メンタル不調を訴える労働者が無断欠勤を続けるという事態に遭遇した場合、適正な対応、その後の人事処遇が求められます。特段の措置をとらないままに、「就業規則の形式的手続きに則っている」という理由のみで下した懲戒処分は、後から無効とされる場合があります。

まとめ

メンタルヘルス不調が疑われる労働者に対する不適切な対応および措置は、事業場の雰囲気や活力、モラールの低下、労働力の減退を引き起こすばかりでなく、違法・無効な懲戒処分を下した企業という社会的イメージの低下などの、甚大な損失を被ることになるでしょう。メンタルヘルス不調に限りませんが、従業員の健康問題を企業戦略、経営課題の重要施策ととらえ、取り組む姿勢が求められます。

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