令和3年1月に、名古屋高等裁判所で、
運送会社において「運行管理」などを任されていた社員を、
「倉庫勤務」に配置転換する人事異動が無効だ
とする判決が出されたという報道がされました(令和3年5月5日 日本経済新聞)。
この裁判の事案の概要ですが、以下のような流れのようです。
東海地方に住む運行管理者の国家資格をもつ50代の男性が、ハローワークで運送会社の求人募集を見つけ、その会社に応募し、面接を受けました。
この男性は、複数の運送会社で、「運転手への上部の割り振り」や「疲労度を把握する」といった職務を経験していました。
採用面接の際に前職を辞めた理由について、
「運行管理などを行いたかったが、夜間の点呼業務に異動させられた」
ことから、前職を退職したと説明したようです。
これに対して、求人募集・面接をした運送会社は、
「夜間点呼への異動はない」と説明し、この男性を雇用しました。
運送会社は、はじめは男性に、運行管理や配車の業務を任せていました。
しかし、しばらくして配置転換が行われ、倉庫部門への異動となった、という経緯のようです。
これに対して、この男性が、
「採用時に職種を限定する合意があった」
と主張し、人事異動の無効確認を求めて、運送会社を提訴したということでした。
この訴訟に対して、第一審の判決は、職種を限定する合意が存在するとは認めなかったようです。
しかし、
配置転換先の業務内容が、
「運行管理者として培ってきた能力や経験が生かせる」という
原告の期待に大きく反する
という理由で、通常受け入れるべき程度を著しく超える不利益を負わせたとして、配置転換を無効であると認めたそうです。
そして、控訴審でも第一審の判決と同様に、
能力や経験を生かせない業務に漫然と配置転換しており権利の濫用に当たる
として、第一審の判決をそのまま認めたという結果でした。
これまでの日本の雇用慣行では、「長期的な雇用を予定した正社員」に関しては、職種・職務内容や勤務地を限定せずに採用されていました。
したがって、企業内での労働力の補充・調整のために広範囲な配置転換(転勤など)が行われていくことが予定されていました。
そのため、一般的には、
「雇用する側の企業には、広く配置転換する権利がある」
と考えられています。
しかし、配置転換をする権利があるとしても、「労働者の利益」に配慮して行われなければなりません。
「業務上の必要性のないような配置転換権の濫用は認められない」
といった考えが通常の考えかと思われます。
配置転換の命令が制限される場合として代表的な場合は、
「労働契約の内容として職種の限定が合意されている場合」が挙げられます。
特に雇用契約書に明示されていなくても、医師など何らかの特殊な資格を有しており、それを基に採用されているような場合には、職種限定の合意がされていると判断されやすいと考えられます。
また、職種以外にも、勤務地が限定されている場合には、
一方的に勤務地を変更することはできないと解釈されるでしょう。
ただし、勤務地については、余剰人員の調整といった理由があるような場合には、転勤の命令が有効だと解釈される余地もあります。
このような職種や勤務地を限定した契約がある場合に問題になるのは、
に、どのようになるのかという問題があります。
職種を限定している以上、その職種に関する事業から撤退するような場合には、雇用契約の前提を欠くことになります。
そのため、雇用契約を継続する必要性がないようにも考えられます。
また、その地域から事業を撤退するのであれば、仕事自体がなくなるわけです。
転勤できない社員は職場がなくなり、仕事もできないため、雇用契約を継続することができないのではないかとも考えられます。
このような職種や勤務地の限定がある場合に、
その職種や勤務地に関する部分から事業を撤退することによって、
端的に解雇が可能となる可能性もあります。
ただし、日本の裁判所は一方的な解雇を認めにくい傾向にあります。
ですから、事業撤退の場合であっても、できるだけ解雇を回避する努力(他職種への転換、転勤の打診、次の職場の紹介等)は行った方がいいと考えられます。
例えば、世の中でテレワークが一般化しますと、「勤務地限定の契約」の拘束力が強まるといった可能性も考えられます。
社会情勢の変化が激しい昨今においては、「事業の撤退」ということもよくある話になってきそうですので、このような争いが増えるかもしれません。
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