労働者の時間外労働に対して、労働基準法に基づく手当が支払われないというサービス残業が社会的問題となり、本来支払われるべき割増賃金(残業代)を請求する訴訟件数も増加傾向にあります。
割増賃金(残業代)請求事件における訴訟物は、
です。
⑴雇用契約に基づく賃金支払請求権(未払賃金の支払請求権)は、労働者が時間外労働をしたことに対する対価として、当然に取得する賃金請求権(労働基準法11条)ですが、
⑵付加金請求権、⑶遅延損害金については、若干割増賃金(残業代)請求特有の問題があります。
付加金とは
労働基準法114条は、「裁判所が、第20条(解雇予告手当)、第26条(休業手当)、若しくは第37条(割増賃金)の規定に違反した使用者又は第39条第6項(年休に対する賃金)の規定による賃金を支払わなかった使用者に対して、労働者の請求により、これらの規定により使用者が支払わなければならない金額についての未払金のほか、これと同一額の付加金の支払いを命ずることができる」と規定しています。
すなわち、付加金は、未払金とは別に、さらに同額のお金を労働者が請求できるという、使用者に対する一種の制裁金のような制度です。
同条は、付加金の請求期間を違反のあったときから2年以内と規定しており、これは、中断事由のない除斥期間と解されています。
付加金支払義務は裁判所の命令によって初めて発生し(最高裁昭和35年3月11日判例)、付加金付与の有無は裁判所の裁量に委ねられています。
付加金の金額についても、必ずしも未払金と「同一額」である必要はなく、裁判所は柔軟に減額することができるとされています(大阪地裁平成19年11月29日判例、東京地裁平成20年1月28日判例等)。
裁判所の判決によって生じるものですから、裁判所が命ずることのない、労働審判や調停手続きなどでは付加金の請求は認められていないことに注意が必要です。
付加金請求権は、通常の訴訟物とは異なり、付帯請求と解されています。
在職中、会社に対して割増賃金(残業代)請求をする場合には、原則年6分の利率における遅延損害金を付すことができます(商法514条)。
遅延損害金の始期は、賃金の支払時期の翌日となります。
退職後に割増賃金(残業代)を請求する場合には、賃金の支払い確保等に関する法6条に基づき、退職日の翌日から年14.6%の割合による遅延損害金を付すことができます。
遅延損害金の利率が異なりますので、どのタイミングで割増賃金(残業代)を請求するのか注意が必要です。
また、付加金の遅延損害金については、判決確定の日の翌日から民事法定利率(民法404条)である年5分の割合による遅延損害金を付すことができます(最高裁昭和50年7月17日判例)。
以上を踏まえると、割増賃金(残業代)請求における請求の趣旨はおよそ次のとおりとなります。
(在職中に請求する場合)
(退職後に請求する場合)
との判決及び第1項についての仮執行宣言を求める。
まず、原告となる労働者が、雇用契約の締結、雇用契約中の時間外労働に関する合意の内容、請求に対応する期間の時間外労働の提供(労働時間該当性及び労務提供の事実)について主張立証します。
もっとも、厚生労働省の通達「労働時間の適切な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」(平成13年4月6日339号)等において、
労働基準法が、労働時間、休日、深夜業等について規制を設けている趣旨に照らして、使用者は、労働時間を適正に把握するなど労働時間を適切に監視する責務があるとしており、
実際の訴訟では、会社が原告の請求に対する会社側の具体的時間の管理状況について説明するよう求められ、それに対して労働者が反論していくという展開も多く、事実上、労働者側の労働時間の主張立証責任は軽減されています。
これに対して、被告となる使用者側は、
等を主張・立証します。
割増賃金(残業代)請求事件においては、労働時間制、管理監督者制、割増賃金の計算の基礎となる賃金手当の範囲など、客観的事実というよりも評価が問題となることが多く、そのため比較的早期に客観的事実を確定すべく、次の書証の提出が求められます。
訴訟の迅速・適正・実行的解決のために、被告である会社側においても証拠の提出あるいは原告に対する任意開示が求められます。
割増賃金(残業代)請求事件においても、他の労働事件同様和解で終了する事案が大半です。
判決となると、当事者・裁判所双方にとって、手間や時間がかかり、主張立証責任等に依拠した硬直的結論となり、具体的妥当性に疑問が残ることも少なくありません。
他方、和解であれば、裁判官の心証に応じた割合的な金額を算定するなど具体的妥当性を追求した解決が可能となります。
また、個別労働紛争を解決する手続きでも言及した通り、割増賃金(残業代)請求において使用者側がまず考慮すべきは他の労働者への波及効果です。
和解となった場合には、秘匿条項(*)を入れるなど柔軟な解決が可能となりますので、敗訴リスクを回避する以上のメリットが使用者側にはあります。
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