弁護士 杉浦 恵一
就業規則を作成している会社では、その中で社員に対する懲戒処分の規定を設けている会社が多いと思われます。 懲戒処分は、原則として就業規則中で定められていなければすることができないと考えられていますし、 厚生労働省のモデル就業規則でも懲戒処分の定めが記載されていますので、一般的な就業規則であれば懲戒処分の規定が含まれていると考えられます。
企業内で懲戒処分を行う事例は必ずしも多くはないと思われますが、懲戒処分を行った際に、会社内で懲戒処分について公表をする慣例、もしくは仕組みになっている会社もあると思います。
このような懲戒処分について、どの範囲で公表をするかによってリスクが変わってきますので、公表をするにしてもその範囲などは十分検討した上で公表する必要があるでしょう。
社員の懲戒処分に関して、労働契約法15条では、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする。」と定められています。
懲戒処分に関する法律上の定めは少なく、懲戒処分をしたことの公表の是非については、特に法律上の定めはありません。
そうしますと、懲戒処分の公表に関しては、就業規則や一般の法律(民法・刑法など)に準拠して判断されることになると考えられます。
まず、就業規則に関して、懲戒処分の規定を設けている会社は多いと思われますが、その規定に懲戒処分の公表について定める規定を設けている会社は、ほとんどないのではないかと思われます。
懲戒処分をこれまで社内で公表したことがある会社でも、それは慣例的に行われてきたことではないかと考えられます。
懲戒処分に関する手続について、その公表の範囲や方法についても、リスク軽減という意味では定めておいた方が無難でしょう。
ただし、就業規則に記載すれば問題がないわけではありません。 就業規則に記載したとしても、例えば民法や刑法に抵触するような場合には、違法性が問われる可能性があります。
例えば刑法230条では、「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。」(名誉棄損罪)が定められています。
ここでの「事実」とは、社会的な名誉を低下させるような事実を意味しており、懲戒処分を受けたということは社会的な名誉を低下させることに繋がる可能性が十分考えられます。
名誉棄損罪は、その摘示する事実が真実でも虚偽でも、いずれにしても成立することになります。真実であれば名誉棄損にならないというわけではありませんので、注意が必要です。
また、社内に懲戒処分を公表することが、民法上の不法行為となり、損害賠償(慰謝料)支払いの対象となることもあります。
例えば、過去の裁判例(東京地方裁判所 平成14年9月3日判決)では、会社が、約1100名の全社員に懲戒解雇の事実を通知したことや数十名の社員に不正確な事実を告げたことが、その原因が懲戒を受けた社員にあって、責任の大半は懲戒を受けた社員が負担せざるを得ないものであること等を考えたとしても、55万円の慰謝料が認められています。
このように、懲戒処分の公表により損害賠償が生じる可能性もありますので、注意が必要でしょう。
では、そもそもなぜ懲戒処分の公表がされるのでしょうか。
その理由として最も挙げられるものは、懲戒処分を公表して他の社員と共有することによって、同じような事例の再発防止と企業秩序の維持に役立てるというものがあります。
再発防止を目的にするのであれば、例えば氏名は公表せず、処分の対象となった事実と懲戒処分の種類だけを公表したり、処分対象となった事実もある程度抽象化する、一定期間にまとめて公表する、といった方法も考えられます。
懲戒処分の公表を慣例的に行ってきた企業も多いとは思われますが、昨今のコンプライアンス尊重の時代からしますと、改めてその根拠や必要性などを確認した方がいいでしょう。
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