弁護士 杉浦 恵一
最近では、日本でも「ジョブ型雇用」という概念・考え方が増えてきているようです。
日本経済新聞の記事で、ジョブ型雇用を導入した企業において、雇用形態と就業規則の整合性が課題になっているという記事がありましたが、どのような課題・問題があるのでしょうか。
まず、「ジョブ型雇用」と「メンバーシップ型雇用」は、法律上の用語ではなく、法律上の定義があるわけでもありません。一般的に区分けされていますが、労働法上はどちらも従業員・労働者に当たります。
「メンバーシップ型雇用」とは、一般的な意味として、職務内容(勤務地等を含む)を限定せずに雇用され、雇用後の人事権に関しては企業側に広く認められる、といったイメージの雇用です。従来から日本で多くみられた一括採用のような、必ずしも能力面ではなく、人柄をみて採用し、雇用後に社内で必要な能力・スキルを身につけていく、といったイメージが近いと思われます。
これに対してジョブ型雇用とは、企業が用意した特定の職務・仕事内容(ジョブ)のために必要とされる能力をもった人物を採用するという、職務とそれに対する能力を前提にした雇用形態だと考えられています。
最初から企業が用意した職務・仕事に見合った能力がある人物を採用することが前提としてありますので、社内での研修や能力の養成は想定されておらず、最初から即戦力になることが期待されていると言えるでしょう。
このようなジョブ型雇用は、従来は欧米に多い雇用形態だと言われてきました。
しかし、近時では日本の企業でも導入が始まっており、日本能率協会が行った調査によると、ジョブ型企業を導入済みとした企業は2割超になっており、導入を検討中の企業が4割超であった、ということです。
このように日本の企業でも、ジョブ型雇用が広がってきているか、広がりつつあるようですので、将来的にはジョブ型雇用の方が主流になってくる可能性があります。
しかし、ジョブ型雇用が広がった場合には、それによる別の問題が出てくる可能性もあります。
例えば、ジョブ型雇用の場合には、職種、職務内容(場合によっては勤務地等)を詳細に特定して契約する場合があり、むしろジョブ型雇用である以上は、このような職務内容等は詳細に決めるべきとも言えます。
ジョブ型雇用の場合には、特定の職務・能力が期待されており、例えば企業が新しく始めた分野の仕事のために採用したといった場合も想定されます。
権利を濫用したかどうかは、色々な事情を総合的に考慮して判断されますので、最終的には企業が出向させる必要性・理由と、労働者側の出向することが不都合な事情の比較衡量によって決まってくるのではないかと考えられます。
このような場合でも、新規開拓分野が必ずしもうまくいくとは限りません。
うまくいなかった場合には、企業がその分野から撤退する可能性も考えられますが、その場合にジョブ型で雇用した労働者はどのようになるのでしょうか。
撤退した分野に特化した能力があるものの、その企業の他の部署・分野で生かすことができるような能力を有していなかったような場合には、他の社員と同じくらいの給与水準にすることができるのかといった問題や、仕事がないことから解雇をすることができるのか、といった問題が出てきそうです。
また、ジョブ型雇用は特定の仕事に対して、それに見合う能力があることが前提で採用されることになりますので、そもそもその仕事・職務に見合った能力がなかった場合(または企業が期待するような水準になっていなかった場合)、例えば解雇をすることが可能なのでしょうか。
従来の雇用形態(いわゆるメンバーシップ型雇用)であれば、企業に広い人事権が認められていましたので、配置転換などでまずはその人に適正にあった部署等がないかどうか確認したり、企業が更なる教育を行うことで労働者の能力を向上させるように努力する必要性が考えられました。
しかし、ジョブ型雇用では、最初から職務に見合った能力があることが前提であり、企業が教育することも通常は予定されていないと思われますので、どのように対処するかという問題が生じることになりそうです。
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