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事業場外におけるみなし労働時間制について

事業場外におけるみなし労働時間制について

タイムカード

事業者は、タイムカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならないとされています(労働安全衛生法66条の8の3、労働安全衛生規則52条の7の3)。

労働基準法において、労働者が事業場の外で業務に従事した場合に、労働時間を算定し難いときには、所定労働時間労働したものとみなすものとされています(労働基準法38条の2第1項)。
また、業務の遂行に通常所定労働時間を超えて労働することが必要になる場合には、当該業務遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされます(同ただし書)。

この規定の適用が問題になる例としては、記者や営業職等、事業場外で勤務していた従業員から、残業代等が未払になっているとして、その請求を受ける場合等が考えられます。

このとき、「労働時間を算定し難いとき」と認められれば、所定労働時間ないし業務遂行に通常必要とされる時間労働したものとみなされますから、未払残業代請求は認められない、あるいは認められても少額になる可能性があります。

そこで、どのような場合であれば、「労働時間を算定し難いとき」に該当すると認められるかが問題になります。

労働時間を算定し難いときとは、行政の通達(昭和63年1月1日基発第1号、婦発第1号)によると、事業場外で業務に従事し、使用者の具体的指揮監督が及ばず労働時間の算定が困難な業務であるとされています。

また、同通達では「労働時間を算定し難いとき」に該当しない具体例として、以下のような場合が挙げられています。

  1. 何人かのグループで事業場外労働に従事する場合で、そのメンバーの中に労働時間の管理をする者がいる場合
  2. 無線やポケットベル等によって随時使用者の指示を受けながら事業場外で労働している場合
  3. 事業場において、訪問先、帰社時刻等当日の業務の具体的指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務に従事し、その後、事業場に戻る場合

「労働時間を算定し難いとき」に該当するか否かの判断において、過去の裁判例では、具体的状況において、客観的にみて労働時間を算定し難いといえるかどうかを判断しています。
そのため、そのため、使用者が労働時間の算定が困難だと考えているだけでは、この規定が適用されるものではないといえるでしょう。といえるでしょう。

以下では、この点について争いになった裁判例を二つ取り上げます。

事案の概要

事案としては、Y社の従業員として、募集型の企画旅行における添乗員の業務を行っていたXが、Y社に対して、時間外割増賃金(残業代)の支払いを求めたものです。
Xの請求に対して、Y社は、「労働時間を算定し難いとき」に該当し所定労働時間労働したものとみなされるため、残業代は発生しないと主張していました。
第1審(東京地判平成22年7月2日)は、「労働時間を算定し難いとき」に該当すると判断しましたが、原審(東京高判平成24年3月7日)は、「労働時間を算定し難いとき」には該当しないと判断し、Y社が上告しました。

判示内容

最高裁は、Xの添乗員としての業務について、

①「旅行日程が…その日時や目的地等を明らかにして定められることによって、業務の内容があらかじめ具体的に確定されており、添乗員が自ら決定できる事項の範囲及びその決定に係る選択の幅は限られている」こと、

②Y社「は、添乗員との間で、あらかじめ定められた初稿日程に沿った旅程の管理等の業務を行うべきことを具体的に指示した上で、予定された旅行日程に途中で相応の変更を要する事態が生じた場合にはその時点で個別の指示をするものとされ、旅行日程の終了後は内容の正確性を確認し得る添乗日報によって業務の遂行の状況等につき詳細な報告を受けるものとされている」こと

を事情として挙げたうえで、

「以上のような業務の性質、内容やその遂行の態様、状況等、本件会社と添乗員との間の業務に関する指示及び報告の方法、内容やその実施の態様、状況等に鑑みると、本件添乗業務については、これに従事する添乗員の勤務の状況を具体的に把握することが困難であったとは認め難く、労働基準法38条の2第1項にいう「労働時間を算定し難いとき」に当たるとはいえないと解するのが相当である。」と判示して上告を棄却(高裁の判断を維持)しました。

判決について

この判決は、「労働時間を算定し難いとき」に該当するか否かを判断した初めての最高裁判所の判決であり、該当性判断の一般的基準を示したわけではありませんが、後述の裁判例などもこの判断要素に従って判断をしています。
また、旅行ツアーへの添乗という、一見すると労働時間の算定が困難に思われる業務であっても、具体的事情に照らせば、労働時間を算定し難いとはいえないという判断がなされることがあるという意味でも、同様の事例を検討するうえで参考になると思われます。

なお、この会社は、他の従業員との間でも2件同様に訴訟になっており、いずれも東京高等裁判所にてみなし労働時間制の適用を否定した判決が出されており(東京高等裁判所平成23年9月14日判決、東京高等裁判所平成24年3月7日判決)、上告棄却・上告不受理決定となっています。

事案の概要

事案としては、Y社の従業員であるXが、医療情報担当者(MR)として、営業先である医療機関を自宅から直接訪問し、直接帰宅するという形態で就労していたところ、未払残業代の支払いを求めてY社を提訴したというものです。
Xの請求に対して、Y社は、「労働時間を算定し難いとき」に該当するとして争いました。

原審は、「各日の具体的な訪問先や訪問のスケジュールは原告の裁量に委ねられており、上司が決定したり指示したりするものではない上、業務内容に関する事後報告も軽易なものであることなどからすれば、使用者である被告は、労働者である原告の勤務の状況を具体的に把握することは困難であったと認めるのが相当である」として「労働時間を算定し難いとき」には該当しないと判断しました。

判示内容

裁判所は、Xの勤務状況を具体的に把握することは困難であったとの判断を維持しつつも、週報を利用すれば、「週ごとに、事後的にではあるが、MRが1日の間に行った業務の営業先と内容とを具体的に報告させ、それらを把握することが可能であった」としたうえで、

平成30年12月にY社勤怠システム(パソコン又はスマートフォンから入力することにより勤怠時刻が打刻され、位置情報の取得につき許可していた場合には、位置情報も把握できるもの)を導入したこと及び不適切な打刻については注意喚起をしていたことから、「直行直帰を基本的な勤務形態とするMRについても、始業時刻及び終業時刻を把握することが可能となった」、

「本件システムの導入後は…始業時刻から終業時刻までの間に行った業務の内容や休憩時間を管理することができるよう、日報の提出を求めたり、週報の様式を改定したりすることが可能であり、仮に、MRが打刻した始業時刻及び終業時刻の正確性やその間の労働実態などに疑問があるときには、貸与したスマートフォンを用いて、業務の遂行状況について、随時、上司に報告させたり上司から確認をしたりすることも可能であった」として、

勤怠システムを導入した平成30年12月以降は「労働時間を算定し難いとき」には該当しないと判示しました。
(なお、Xの請求自体は時間外・休日労働をしたことが認定できないとして認められていません。)

判決について

本判決は、使用者側が平成30年12月に勤怠システムを導入した前後で、「労働時間を算定し難いとき」に該当するかどうかが異なると判断した点に特徴があります。

原審は、労働者に与えられた営業活動の裁量が大きく、報告も簡易的であったことを重視して算定は困難であるとしましたが、本判決は、勤怠システムの導入後は、貸与したスマートフォンや週報を活用する等して労働時間を算定することが可能であったと判断したものです。
現在の会社の状況で、合理的な措置を講ずれば労働時間を算定することができる場合には、労働時間を算定することが困難とはいえないという判断をされており、参考になると思われます。

このように、「労働時間を算定し難いとき」の判断は、個別の事情を考慮して具体的・客観的に行われます。

また、そもそも事業者は、タイムカード、パソコンの使用時間の記録などの客観的方法により、労働者の労働時間の状況を把握しなければならないとされています(労働安全衛生法66条の8の3、労働安全衛生規則52条の7の3)。

事業場外におけるみなし労働時間制を採用している場合には、本当に労働時間を算定することができないのか、合理的な措置を講ずれば労働時間を算定することができるのではないかを一度検討してみてもよいかもしれません。

なお、みなし労働時間制の適用がある場合であっても、業務遂行に通常必要な時間が所定労働時間を超えている場合には、その分の残業代については支払義務があることには注意が必要です。

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