弁護士 杉浦惠一
近年、少子化や生産年齢人口の減少とともに、企業の採用難・人手不足が注目されています。他方で、採用難であるからこそ、採用で失敗をしないように、企業で「リファレンスチェック」を行うことも聞かれるようになってきました。
この「リファレンスチェック」とは何でしょうか。
「リファレンス(reference)」を調べると、「言及」、「参照」、「参考書」、「身元証明」といったような訳語が出てきます。企業の採用の際に使われる「リファレンス」、「リファレンスチェック」とは、端的に言えば前職の職場などに職歴や就業状況を調査することを指します。
企業の採用面接では、例えば筆記試験や実技試験を課すことによって、その応募者の能力を概ね測ることができるのではないかと思われます。
しかし、その応募者の勤務態度、考え、コミュニケーション能力といった数値化や計測のしにくい能力は、実際に採用し、一緒に働いてみなければ分からない部分が多いのではないかと思われます。
企業では試用期間を設けているところも多くあると思います。しかし、試用期間はその期間であれば簡単に解雇できるという期間ではありません。
通常の解雇よりも広く解雇が認められる可能性はありますが、試用期間中であっても解雇は客観的に合理的な理由が存しており、社会通念上相当として是認されうる場合にのみ許される、とした最高裁判例もあります(最高裁判所 昭和48年12月12日判決)。
このように、雇用のミスマッチがあると日本では解雇が簡単ではないことから、人手不足で採用難であるからこそ、企業は採用に力を入れるのではないでしょうか。
では、この「リファレンスチェック」をすることは適法なのでしょうか。
このような行為を禁止する法令はありませんので、リファレンスチェック(前職の職場等に問い合わせをすること)自体は可能です。
ただし、近年ではプライバシーの問題(※1)や個人情報保護の問題(※2)が重要視されていますので、問い合わせを受けた前職の職場としても、応募者本人の同意がなければ、このようなリファレンスチェックに応じることは難しいのではないかと思われます。
※1…プライバシー侵害になる場合として、①その事実が私生活上の事実または事実と受け取られる可能性がある事柄であること、②その事実が未だ公開されていない事実であること、③通常の人であればそのような事実の公開を拒否するような事実であること、を満たす必要があると言われています。
※2…個人情報保護法2条1項では、「個人情報」を、生存する個人に関する情報であって、その情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)、といったような定義をしています。
そのため、企業でリファレンスチェックを行うような場合には、前提として応募者に前職などへのリファレンスチェックを行うことに同意してもらう必要があるでしょう。
また、リファレンスチェックを行うに当たり、そのチェックを行う相手(前職の上司や同僚など)も応募者から紹介をしてもらうと、話がスムーズに進むと考えられます。
なお、このリファレンスチェックを強制することはできません。応募者に依頼をしても同意しないということあれば、民間企業でそれ以上の調査は困難でしょう。(リファレンスチェックに同意しないことを、採用選考で不利な点として扱うことは可能です)
また、リファレンスチェックに同意がされ、実際に前職の職場に問い合わせをした際でも、あらゆる質問をしてもいいわけではありません。あくまで仕事として採用をするかどうかの判断に使うためですので、原則として、個人の出自、信条などは聞くべきではないでしょう。
※厚生労働省の「公正な採用選考の基本」(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/newpage_56780.html)では、本人に責任のない事項の把握(本籍、家族、家庭環境等)や本来自由であるべき事項の把握(思想、信条等)は配慮すべき事項とされています。
今後、企業ではこのようなリファレンスチェックが一般化する可能性もありますが、実施するとしても十分に注意して実施する必要があるでしょう。
【ご相談予約専門ダイヤル】
0120-758-352
平日・土日祝 6:00-22:00
【相談時間のご案内】
平日 | 9:00-18:30 |
---|---|
夜間 | 17:30-21:00 |
土曜 | 9:30-17:00 |
※夜間相談の曜日は各事務所により異なります
詳しくはこちら▶
名古屋総合法律事務所のご紹介
事務所外観
より良いサービスのご提供のため、労務問題の取扱案件の対応エリアを、下記の地域に限らせて頂きます。
【取り扱いエリア】
愛知県西部 (名古屋市千種区,東区,北区,西区,中村区,中区,昭和区,瑞穂区,熱田区,中川区,港区,南区,守山区,緑区,名東区,天白区,
豊明市,日進市,清須市,北名古屋市,西春日井郡(豊山町),愛知郡(東郷町),春日井市,小牧市瀬戸市,尾張旭市,長久手市津島市,愛西市,弥富市,あま市,海部郡(大治町 蟹江町 飛島村),
一宮市,稲沢市,犬山市,江南市,岩倉市,丹羽郡(大口町 扶桑町),半田市,常滑市,東海市,大府市,知多市,知多郡(阿久比町 東浦町 南知多町 美浜町 武豊町))
愛知県中部 (豊田市,みよし市,岡崎市,額田郡(幸田町),安城市,碧南市,刈谷市,西尾市,知立市,高浜市)
愛知県東部(豊橋市,豊川市,蒲郡市,田原市,新城市,北設楽郡(設楽町 東栄町 豊根村))
岐阜県南部(岐阜市,関市,美濃市,羽島市,各務原市,山県市,瑞穂市,本巣市,本巣郡(北方町),多治見市,瑞浪市,土岐市,大垣市,海津市,養老郡(養老町),不破郡(垂井町
関ヶ原町),安八郡(神戸町 輪之内町 安八町),揖斐郡(揖斐川町 大野町 池田町),恵那市,中津川市,美濃加茂市,可児市,加茂郡(坂祝町 富加町 川辺町 七宗町 八百津町 白川町 東白川村),可児郡(御嵩町))
三重県北部(四日市市,三重郡(菰野町 朝日町 川越町),桑名市,いなべ市,桑名郡(木曽岬町),員弁郡(東員町))
三重県中部(津市,亀山市,鈴鹿市)
静岡県西部(浜松市,磐田市,袋井市,湖西市)
以下の事項に関して、万一、閲覧者様または第三者に損害が発生した場合においても、当事務所は一切の責任を負いません。
Copyright © 弁護士法人 名古屋総合法律事務所 All Rights Reserved.
運営管理:弁護士法人 名古屋総合法律事務所 所属:愛知県弁護士会(旧名古屋弁護士会)
弁護士の法律相談・法務相談、司法書士の登記相談・登記手続一般 〒460-0002 名古屋市中区丸の内二丁目20番25号 メットライフ名古屋丸の内ビル6階(旧丸の内STビル) TEL:052-231-2601 FAX:052-231-2602
■提供サービス…交通事故、遺言・相続・遺産分割・遺留分減殺請求・相続放棄・後見、不動産・借地借家、離婚・財産分与・慰謝料・年金分割・親権・男女問題、債務整理、過払い金請求・任意整理・自己破産・個人再生、企業法務、契約書作成・債権回収、コンプライアンス、雇用関係・労務問題労働事件、対消費者問題、事業承継、会社整理、事業再生、法人破産
■主な対応エリア…愛知県西部(名古屋市千種区,東区,北区,西区,中村区,中区,昭和区,瑞穂区,熱田区,中川区,港区,南区,守山区,緑区,名東区,天白区,
豊明市,日進市,清須市,北名古屋市,西春日井郡(豊山町),愛知郡(東郷町),春日井市,小牧市瀬戸市,尾張旭市,長久手市津島市,愛西市,弥富市,あま市,海部郡(大治町 蟹江町 飛島村),
一宮市,稲沢市,犬山市,江南市,岩倉市,丹羽郡(大口町 扶桑町),半田市,常滑市,東海市,大府市,知多市,知多郡(阿久比町 東浦町 南知多町 美浜町 武豊町))
愛知県中部(豊田市,みよし市,岡崎市,額田郡(幸田町),安城市,碧南市,刈谷市,西尾市,知立市,高浜市)
愛知県東部(豊橋市,豊川市,蒲郡市,田原市,新城市,北設楽郡(設楽町 東栄町 豊根村))
岐阜県南部(岐阜市,関市,美濃市,羽島市,羽島郡(岐南町,笠松町),各務原市,山県市,瑞穂市,本巣市,本巣郡(北方町),多治見市,瑞浪市,土岐市,
大垣市,海津市,養老郡(養老町),不破郡(垂井町 関ヶ原町),安八郡(神戸町 輪之内町 安八町),揖斐郡(揖斐川町 大野町 池田町),恵那市,中津川市,美濃加茂市,可児市,加茂郡(坂祝町 富加町 川辺町 七宗町 八百津町 白川町 東白川村),可児郡(御嵩町))
三重県北部(四日市市,三重郡(菰野町 朝日町 川越町),桑名市,いなべ市,桑名郡(木曽岬町),員弁郡(東員町))
三重県中部(津市,亀山市,鈴鹿市)
静岡県西部(浜松市,磐田市,袋井市,湖西市)