使用者の「安全配慮義務」については、多くの場面で意識され啓発されていることと感じます。
これは、労働契約法第5条において、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定められていることによります。
使用者(一般的には企業)は、その使用する労働者が生命や身体等の安全を確保しつつ労働できるよう配慮する義務を負っている、ということになります。
では、企業における事業活動において、生命や身体等の安全を確保するということは、使用者のみにより達成されるのでしょうか。
答えは言うまでもないでしょう。使用者のみならず、事業場で働く労働者自身による努力、協力があってはじめて達成されるものと考えるのが自然でしょう。
使用者が事業場において労働災害が起きないよう講じていても、実施にそのルールを遵守するのは労働者です。
また、労働者が健康を害していることを使用者が知ったことから、業務量を軽減したり残業を禁止したり、または療養に専念するよう指示したとしても、これをどう実現するのは、労働者自身にかかっているといえるでしょう。
労働安全衛生法や労働安全衛生規則において、使用者の安全配慮義務については細かく明文化されていますが、労働者自身の安全や健康の管理義務についてはどうなっているのでしょうか。
「自己保健義務」(法律上定められた文言ではないのですが)、労働者自身が自らの健康状態に注意し管理し、安全に働くことが出来るよう主体的に行動する義務について、労働安全衛生法においては、以下の条文により定められています。
労働安全衛生法 66条5項 |
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労働者は、前各項の規定により事業者が行なう健康診断を受けなければならない。ただし、事業者の指定した医師又は歯科医師が行なう健康診断を受けることを希望しない場合において、他の医師又は歯科医師の行なうこれらの規定による健康診断に相当する健康診断を受け、その結果を証明する書面を事業者に提出したときは、この限りでない。 |
労働安全衛生法 66条7 第2項 |
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労働者は、前条の規定により通知された健康診断の結果及び前項の規定による保健指導を利用して、その健康の保持に努めるものとする。 |
労働安全衛生法 69条2項 |
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労働者は、前項の事業者が講ずる措置を利用して、その健康の保持増進に努めるものとする。 |
このように、職場で安全・健康を保持しつつ、労働するためには、使用者による安全配慮義務の履行とともに、労働者側の自己保健義務の履行が求められます。
万が一、望まぬ事故等が発生すれば、これら2つの義務の履行状況が評価され、いわゆる過失相殺により賠償義務が課される事が想定されます。
職場の健康経営が労使双方のたゆまぬ努力により保持される、ということを念頭におく必要があります。
日本の社会に明るい職場環境が広がるよう、願っています。
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